いのちの現場での問題点~現場で働く助産師の目線から~
死産では、通常の産科病棟分娩室で産婦は「亡くなっている子どもを出産」します。
本来出産は自然なものなので出産が重なることもあります。この場合は隣の分娩台では子どもが産声をあげ「おめでとうございます」という喜びの出産がある一方で、時を同じくして、隣で亡くなっている赤ちゃんが誕生するという状況も発生します。
産科の特徴として建物の構造上、元気な赤ちゃんを連れた出産後の方が、死産の方の病室の前を通ったり、同室で会ったりもします。死産後の方が赤ちゃんを連れ幸せそうな家族と接触するということが避けれれない状況でもあります。
また、「生きて生まれる」ことが圧倒的に多い臨床現場では「亡くなる」赤ちゃんのために準備されているものが少ないと感じます。特に棺に関しては、児の大きさにより棺が違ってくるため、年に数件しかない死産児の出産のために専用の棺を予め準備している施設は少ないのが現状であり、病院の負担を考えると仕方ない部分でもあります。
棺の代用品を家族に持参してもらうか、簡易的な段ボール製の箱を使用、もしくは病院のスタッフが菓子や点滴薬の空箱などを利用して手作りで作成す場合もあります。
そのため、出産直後から死産児のための棺が準備できることは、”両親・家族のグリーフサポートの一助となる”と感じていると、現場で働く助産師の話として伺いました。
心を形にしたデザイン
ちいさな死産児用の棺は、病院で確保している場合もありますが、ほとんどの場合が個人で準備もしくは葬儀会社から直接購入となります。
葬儀会社から購入する場合、在庫がなければ児の退院に間に合わないこともあります。棺によっては病院への直接販売と複数取りまとめての販売方式となっているため、個人で購入できる棺はインターネット販売などの限られた購入経路しかないと思います。
また、インターネット販売で売られている死産児用の棺は数少なく、デザインは真っ白でシンプルで冷たさを感じるイメージのものが多いと思いました。
そのため、なごみでは悲しい状況の中でも精神の安定につながる温かみある色が必要と考えました。また、赤ちゃんがゆっくり夢見て眠っているのをイメージした、優しくて、温かみのあるデザインにしたいと考え、専門業者と相談の上仕上がったデザイン(柄)となっています。
デザイナーの想い
大切な子供を亡くした後は、なかなか冷静に何をするか考えられないことが多いです。私もそうでした。
そういった状況下で、
「もっとかわいい棺でお見送りしてあげたかった」
と後悔する方が少しでも少なくなり、
「あの時、かわいい棺でお見送りできてよかったな~」
と、後から少しでも思ってもらえるようにとの想いを込めてデザイナーの方にも製作いただいています。
https://www.instagram.com/box_shop_jamie.lucas/
選びやすいサイズ
棺というと「尺」という単位が使用されます。経験しないとこの尺の単位が分かりません。
赤ちゃんの死を目の前に、準備や手続きが多く調べなければならないことがただでさえ多いくある中、わかりやすい、イメージしやすい大きさを準備することで、少しでもご両親・ご家族の心の負担を軽減できるのではないかと考え、入院中でも実際のものをイメージしやすい、A4サイズ(Mサイズ)、A5サイズ(Lサイズ)にしました。
『夢旅』の名前の由来
赤ちゃんがお母さんお父さんの元を離れて寂しいのではなく、
「心地よい夢の中で旅している」ようなイメージで夢旅と名付けました。